勝手に分類バイオアート
こんにちは、Mikenerianです。
今回は、今まで書いてこなかった美術関連の記事を書こうと思います。
テーマは、「バイオアート」です。
バイオアートは、平たく言えば、バイオ(生物)の技術を使って作ったアート作品のことです。
さらに、バイオアートの思想は一般的なアートとも異なります。
より正確に言えば、他のアートが政治や経済を踏まえた上で批評されている中、
バイオアートだけはラディカルに「生命とは何か?」、「人間とは何か?」を問うことができる分野なのです。
・バイオアートについてより詳しく知りたい方は、以下の本がおすすめです。
http://www.amazon.co.jp/dp/4802510195
・さらに美術手帖2018年1月号でも特集が組まれました!
www.bijutsu.press
今回の記事では、独自の切り口でバイオアートを分類したいと思います。
もちろんこんな区切りは妄想でしかないですが、バイオアートを理解する一助になれば幸いです。
転換型
バイオアートの根幹にあるのが、遺伝子の存在です。
生命科学系の大学では、遺伝子に関する授業が基礎科目として位置づけられていますし、
自己同一性を保持する遺伝子という存在は、表現においても欠かせません。
転換型は、その遺伝子ないし遺伝という発想を、ある生物からある生物に転換するような発想を指します。
例えば、長谷川愛の「I Wanna Deliver a Dolphin」がそれにあたります。
aihasegawa.info
これは、代理出産という考え方を拡張し、「人間が人間を産む」という図式を超え、「人間がイルカを産む」というところまで発想を転換しています。
さらにそのような発想を通し、「人間は本当に生命として優れているのか?」といった問いを投げかけてくるわけです。
コンセプト型
個人的に好きな作品として、Diemut Strebeの「Sugababe」があります。
これは、ゴッホの切り落とした左耳を「再現」した耳になります。
ゴッホの親族から採取したDNAに対し遺伝子変換を施したもので、あくまで「再現」ですが、なんともいえない気味悪さ、リアルさがあります。
作品を通し、最先端技術によって簡単に人間が複製されるという可能性を示唆させるだけでなく、美学というものを考えさせられます。
Diemut Strebe
創発型
遺伝子とは、生命の構造を記述した媒体(メディア)であり、それは「情報」を内包しています。
それは通常交配という形で改変が行われ、さらには予測不可能な揺らぎなどによって情報が書き換えられていきます。
ではその「情報」をもとに、新しい何かを生み出すことはできないのでしょうか。
つい最近まで、金沢21世紀美術館で展示されていたBCLの「Ghost in the Cell」は、まさに創発といっていい作品だと思います。
www.kanazawa21.jp
これは、細胞の中の「情報」に創発性、すなわち生命が存在しているかという問題に、
初音ミクという「二次元」の存在が創発し、「三次元」の生命体になりうるかという問題を掛け合わせている、
なかなかパンチの効いた作品となっています。